神田川を歩く (8)歩いてみて考えたこと

はじめに

3日間かけて、神田川の水源まで、それから合流して隅田川になるところまでを歩いてみました。かなり疲れはしましたが、なかなか興味深い体験でした。

カミサカエリアを起点にして、下流へ、そして上流へと歩いたのは、このエリアを流れる神田川がどのように流れてきて、どのようになっていくのか、を体感することで、何かこれまでにない発想が生まれる、あるいはそこまででなくても、何か見逃していたことを再認識できるのではないかと考えたからでした。

結果どうだったかということを少し書いておきます。

川と都市

川の姿ということだけで言えば、はっきり言って神田川に魅力は感じませんでした。コンクリートで固められた状態では無理もありません。自然に近い姿は井の頭池から流れ出る所くらいまでです。それはもう都会を流れる川ですから仕方のないことではあります。見た目の美しさだけでなく、治水などの様々なことを考える必要がありますから。

ただ、改めて気が付いたのは、神田川に流れ込む支流が思った以上に多く、そしてそれらの多くが暗渠になっているということです。そんなに川を塞いでしまっていいのだろうかと疑問を抱きました。もちろん、いろんなことを考慮した結果そうなっているのでしょうから、軽はずみなことは言うつもりはありません。

しかし、都市開発に「環境との共生」という考え方が生かされていくことはこれから先大事なことだと思います。長い年月をかけて築いてきたものをそう簡単に変えることはできませんから、これからの課題だと思います。

川が彩る風景

さて、川そのものの姿はある程度仕方ないとして、川が彩る景観、あるいは川を彩る人間の営みということではどうでしょうか。

まず、川が彩る景観ですが、川は間違いなく風景を豊かにしていると思います。大抵の場合、水面と人間が生活する空間には高低差があります。御茶ノ水あたりはかなりなものです。その分、風景に凹凸が生まれ、表情豊かになります。それがコンクリートの河岸であっても、です。

少なくとも、高度経済成長の時代から比べると水はきれいになりました。大雨の時は除いて、匂いもそれほど感じません。都会を流れる川ですが、いくらかは「自然」を意識できる川だと思います。最近は鮎も遡上とのことです。

普段あまり意識していない神田川のある風景ですが、突然、神田川がなくなったらものすごく寂しい気持ちになるはずです。川の生み出す起伏、川を流れる風、川の匂い、川を流れる水の色、川の音、これらすべてがその土地に関わる人々の生活に染み込み、記憶を形成する一部になっていると思います。

川がない土地は良くないということではありません。むしろ川があるところは恵まれていると考えるべきだと思います。そもそも、昔から、水は貴重なものだったのですから。

川を彩る人

次に、川を彩る人間の営みということです。神田川を歩いてみて強く感じたのは、川沿いに驚くほど多くの樹木を植えているということです。江戸川橋あたりから下流は(御茶ノ水界隈は別にして)ほとんど緑はありません。しかしそれ以外のところでは本当にたくさんの木、特に桜の木を植えているのです。それはきっと水面と桜が織りなす風景を日本人がとても大切に思ってきたことの表れだと思います。

そこで思うのは、コンクリートで固められた川だからこそ、なおさらその両岸を緑や花で彩るべきではないかということです。緑や花は単に見た目が良いということだけでなく、季節を感じさせてくれます。都会の中で四季を感じられるということは人間生活においてとても重要なことだと思います。

もう一つは、橋とフェンスです。コンクリートの壁はあまり手のつけようがないと思いますが、橋(欄干や街灯も含む)や川沿いのフェンスはもっと何かできるような気がします。

橋やフェンスの第一の目的は安全だと思います。しかし、そうした機能性だけでなく、風景や生活を彩るデザインや仕掛けがあっていいと考えます。実際、橋の中には面白いもの、歴史を感じさせるもの、デザイン的に美しいものもありました。

その一方で、フェンスはとても殺風景なものでした。シンプルで無駄がないと言ってしまえばそうなのですが、もう少し考えてみてもいいのではないかと思います。

例えば、地方では木材を使ったフェンスやガードレールが使われるようになってきています。国産の木材や加工した集成材を使って、景観にマッチしたものが使われているところを見かけます。

木材を使うべきだと言っているのではなく、これまでフェンスというものに気を遣わなすぎたのではないかということです。「フェンスだから凝る必要ないでしょう」というぞんざいな扱われ方をしてきたのではないかということです。

いずれにしても、川およびその周辺の人工物や植栽は人の手の入れ方次第で変わります。エコロジカルな視点やアートの視点を組み込めば、生活や商業活動をより豊かなものにする環境が形成されるのではないかと考えます。

カミサカエリアと神田川

さて、神田川の全行程を歩いてみた上で、カミサカエリアと神田川について考えたことを書いておきます。

水源および上流域は郊外の街を流れる川、江戸川橋から隅田川合流までの下流は大都会を流れる川です。カミサカエリアを流れる神田川は中流域になります。カミサカエリアの周辺は住宅地と商業地が混在したところを流れる川です。川らしい流れをある程度は確認でき、水もそこそこ綺麗です。

中流域は河岸に多くの桜が植樹されていますが、残念なことにカミサカエリアには桜並木がありません。公園と大学の樹木が一部にあるだけです。また、桜並木があるところはたいてい遊歩道があるのですが、カミサカエリアには遊歩道がありません。川沿いを歩き続けることができないのです。車を気にせず川沿いを散歩できないのはけっこう残念です。

どういう経緯からか、このあたりは川と建物が隣接しているところが多いのです。「神田川」の歌詞にも「窓の下には神田川」とありますが、まさにそういう感じです。これはこれで悪くはないと思います。

ただ、川を大切にした景観を整備し、街の価値を高めるということを考えるならば、それほど多くのことはできません。ですが、できることが全くないわけではないと考えます。

いくつか思いつきを書いておきます(あくまでも思いつきですができないことではないと思います)。

  • 田島橋周辺の川沿いに大きく育つ樹木を植える。必ずしも桜でなくても良い。また、商店街や近隣の人々の有志で鉢植えの花を飾ってもよい。管理が大変だという声もあるが、それくらいの愛情とコストは惜しむべきではない。
  • 田島橋周辺の橋の欄干とフェンスをデザインしなおす。特に自転車が勝手に止められているあたりのスペースは有効に利用すべき。
  • 前項と重複するが、川周辺の公共物をアートの視点からデザインし直す。このエリアは緑も少なく、かといって大都会でもない。悪く言えば中途半端である。別の言い方をすると、あまり「色」が乏しい。アートで彩るのは一つの方法だと考える。夜の人通りも意外に多いので、1年通してイルミネーションを施しても良いのではないか。

このエリアで暮らしたり、通ったりする人々が、このエリアの景観を大切に思い、歩くのが楽しみであったり、離れても時々帰ってきたくなったりするような空間になればいいなあと思います。

とりあえず、今回はここまでにしておきます。

なお、この回はまだ加筆修正すると思います。

参考

いくつか参考になったサイトなどを挙げておきます。

新宿歴史博物館データベース:神田川周辺の昔の写真を検索することができます。大きく変わったところもあれば、それほど変わっていなかったりして面白いです。

新宿歴史博物館 データベース 写真で見る新宿

散歩の途中:あちこち歩き回っている人のブログです。神田川だけではなく、たくさんの場所を紹介してくれています。

神田川に架かる140の橋:140の橋を紹介してくれています。すべての橋にコメントがついているわけではありませんが、面白いです。

神田川に架かる140の橋※東京・神田川の橋めぐり
神田川写真集。東京・神田川に架かる井の頭池から隅田川(大川)までの神田川140の橋。

2019年1月 藤森

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